2017年5月28日日曜日

新・10大アメリカで驚いたこと



 先日、Harvard Medical School での二ヶ月間の実習を終え、日本に帰国しました。今回の記事では、ちゃんとした実習内容に関する内容から一転、気分転換がてら、私がアメリカで驚いたことについて、10個、ランキング形式で発表したいと思います!

10. High Five Boston!
 レッドソックスのゲームが終わった時間に外を歩いていたら、Redsocksファンだと思われるおじちゃんに、”High five Boston!”と言われてハイタッチをされました。試合があることが相当うれしかったのかなーも思ったのと同時に、アメリカンや!と思いました笑

9. チャイム
 町中を歩いていると、たまに日本の小中高で聞こえてくるキーンコーンカーンコーンというチャイム、聞こえてきます。ボストンで聞こえてくると思わなかったので、最初は空耳かと思いました。特に日本語学校が近くにあるわけでないので、割りとユニバーサルな音なのでしょうか。

8 . 歩行者信号
 信号で歩行者が歩くとき、日本ではどのようなおとがなるでしょうか?鳩のくるっぽーといった音がなりますよね。ボストンの町中を歩いていると同じような音がきこえてくるじゃないですか!そうなんです、ボストンの信号も鳩の鳴き音なんです!笑 帰国直前になってもたまにびっくりしています笑

7. コンサルの存在の大きさ
 こちらは、内科は特に主科というものはあまりなく、関わっているすべての診療科が同時に患者さんを持ちます。その為、例えば神経内科・内分泌・感染症・リウマチ科がコンサルを受けているために、患者さんは毎朝4回、医師の診療を経験することになります…(´∀`)

6. Post call
 こちらの医師は、internは週に80時間以上働いてはいけないというルールが有り、また、当直明けはPost callといって、家に帰って休まなくてはなりません。昔はそのような規定はなかったのですが、医療の環境の改善により、このシステムができたそうです。

5. 病院はショッピングモールのみたい?!
 これはLongwood Medical Areaに特徴的なのですが、Boston Children’s Hospital, Brigham and Woman’s Hospital, Beth Israel Deaconess Medical Center, Dana Faber Canser Research Instituteなど、様々な病院が乱立しており、それぞれの病院がまた別々の研究室やResearch institution を持っているので、日本のアウトレットのように、辺り一帯が全て病院、という光景を目にすることになります。第一印象が、ショッピングモールみたい、でした。

Longwood Medical Areaの、Longwood Aveの写真です。この通り沿い、全部医療関係の建物です!

4. Workroom
 カルテ室は食事可能!です!
 日本はナースステーションがあり、そこでカルテを書きますが、こちらではそれぞれの診療科の更に細かい専門の種類(神経内科のgeneral inpatient, 神経内科のてんかんチーム、など)でそれぞれworkroomを持っており、そこにパソコンが10台弱あり、レジデントはそこでカルテを閲覧・記載します。Attendingの部屋はその隣りにあります。これらのworkroomは飲食可能なので、皆朝ごはんを持ってきたり、スターバックスのコーヒーなどを持ち込んで、食事を取りながら仕事をしています。

3. お昼が提供されるのはレジデントのための福利厚生らしい
 これが何より嬉しいのですが、毎日lunch lectureがあり、医学部の先生を招いてレジデント用にレクチャーを開いて、そこでランチを提供するので、そこに行けば昼食も無料で取れて、勉強にもなるという、一石二鳥な素晴らしい制度があります。
また、これは診療科にもよるのですが、ランチレクチャーは福利厚生の一環で、レジデントに提供しなくてはならないものらしいのですが、提供されてないかもあるみたいで、真相は定かではありません…(・・;)

サンドイッチやクッキー、飲み物も、水はもちろんコーラもあります。


とある日のサンドイッチとポテトチップスランチです。
2. 私服で回診。神経はカバン持ち!
 こちらの医師の服装は、professionalで、smartに見えることが求められているので、シャツにキレイめのパンツか女性はワンピースを着ることも!日本だとドラマでこんな医者いないわっ、と突っ込みたくなるような服装でみんな毎日診療しています。笑 また、神経内科は神経診察の道具を持たなくてはならないので、小さい肩掛けバッグを持っていて、病院のカードを持ってなければ、今からショッピングに行くような格好です。

1. スクラブで街中歩く
 こちらの外科医は、スクラブを病院から借りて、それを着たまま家に帰り、新しいのを持って帰って、朝新しいスクラブを着てそのまま出勤します。その為、スクラブで電車に乗る人も多く、医療関係者が多く住む病院の近くの地域のスーパーでは、スクラブ姿で買い物をする人がたくさんいます。朝5:306:00からプレラウンドやラウンドがあるので、着替える時間一分一秒も惜しいのだと思います。

服装に青が入ってる人が基本的にはスクラブ姿の人たちです。笑

2ヶ月間実習していたBoston Children's Hospital です!

以上、辻利抹茶ラテがお送りしました。(学内の人でわかる人はこれでわかるでしょう笑)

2017年5月26日金曜日

NTUHの心臓血管外科

ご無沙汰してます。けろです。



台湾は日系企業がとても多いのでけろもちゃんといます(笑)
モスバーガーは日本にいた時よりもはるかに多く目にするくらい、台湾人にとって日系のものは人気だったりします。(国内線ターミナルの松山空港近くに飛行機を見に行ったらANAの機体が飛ぶ時だけ歓声が沸き上がってみなさん手を振ってました)


さて、NTUHの心臓血管外科ですが学生の実習は主に見学です。

参加型に比べれば受動的になってしまう点は否めないのですが、偶然にも若手の日本人医師が1年間勉強に来ていたのでその方から日本との違いを色々聞いたり、NTUの6年生と話したりしていたのであまり退屈はしていないです。
日本でもオペ見学は実習に組み込まれていますが、オペ後に執刀医に質問することを考えながら観ていると集中しやすいかなと思います。

医科歯科があまり強いとは言えない領域ですので疾患のマネジメントや外科手術の進め方・考え方についてじっくり考える良い機会になっています。
台湾の最高峰とあって、よく執刀医となる准教授クラスは症例数が豊富で本当に手術が上手いです。元々センスのある人が努力をすれば正しく鬼に金棒なんだなという感じです。

心臓血管外科のレベルは少なくともNTUHに関しては日本のトップレベルと大差がないか、分野によってはNTUHの方が上だろうと日本人医師は言っていました。特にECMOとロボ手術は日本よりもはるかに進んでいました。

ロボ手術はDa vinciを使います。Da vinciを使った手術も初めて見学しましたが、まさか心臓手術が最初になるとは思ってもいませんでした。良好な視野を維持しながら流れるように動かして手術を進めていました。僧帽弁は直視ではかなり視野・アプローチが厳しいのでNTUHでは積極的にロボ手術をしているそうです。

ECMOは1995年の国民皆保険制度導入に伴い、医療費節減でECMOを管理する医師への加算がなくなったことから医師いらずで運用できる体制となっています。特に驚いた症例は分院に来院した典型的なST上昇型心筋梗塞の患者に対してNTUHからECMOチームが向かい、分院にてECMOを導入してそのまま1時間かけてNTUHまで救急搬送をし、緊急CABGとなったものです。
台湾の救急は大病院に患者が集中し、大病院ではアメリカのように廊下まで患者が溜まる状態になっているのですが、必要な重症例については迅速かつ最大限の治療ができる体制がギリギリ保てているようです。


おまけ(食べ物)
台湾といえばマンゴーかき氷!!
ということで(日本人の中での)有名店に行ってきました。6~8月は愛文マンゴーが旬なのでオススメです。



長期滞在でない限りなかなか行かないであろう金門島という離島にも行ってきました。大陸のすぐ近くで両岸関係上非常に重要な島なのですが、現在は観光地としてそれなりに賑わっています。この島で食べた牛肉麺は金門島名産の牛肉を金門島名産の高粱酒でつけて沸騰させた出汁をかけて食べるというスタイルだったのですが、自分の中では台湾のベストフードでした。もし台湾に留学する機会があればこのようなちょっとマイナーめな所にも遊びに行かれるので迷っている後輩は是非アプライしてみてください(笑)



2017年5月23日火曜日

UMC ICU実習

こんにちは。ラスベガスにあるUMC(University Medical Center)で実習をしているyokoです。実習期間の半分以上を過ぎての初投稿になります。

今日は4月にローテートしたICUでの実習について紹介したいと思います。

1.      CAT 3という制度について
UMCでは患者さんの最後の迎え方について、CAT 1-3まで3種類の分類があります。CAT 1はいわゆるフルコースで、胸骨圧迫から挿管からすべての救命処置を全力で行うものです。これは日本でも一般に行われていることだと思います。CAT 2は基本方針として急変時は救命処置をしないものとなっています。ただしいろいろと選択の幅があり、抜管後の再挿管はしないとか、コードブルー(院内放送でのドクターコール)をコールしないとか、抗菌薬を使用しないなど様々な選択肢があります。選択肢の幅は日本よりも多様だと思いますが、これもまた日本で一般的になりつつあることだと思います。医科歯科でもたまにカルテにDNRと赤字で書いてあることがありました。CAT 3ICUにおいてはほぼそのまま安楽死を意味し、CAT 3 になった時点で鎮痛と鎮静以外の全ての治療を止めます。ICUCAT 3になる人は挿管されている患者さんがほとんどですが、CAT 3になった時点で抜管し、抗菌薬も昇圧薬も止めます。Aラインなども抜いてしまうので、最後は心電図とサチュレーションと鎮痛・鎮静のためのラインだけがつながれている状態になります。これは私が大変驚いた点で、日本では明確な基準はないものの、一度挿管された患者さんに対して緩和目的に抜管を行うことは一般に行われないことですし、昇圧薬もすべて止めてしまうと確実にすぐ亡くなってしまいます。こちらの学生や医師は「挿管されたまま、意識もないのに何か月も生きていることは、患者本人にとっても家族にとっても医療者にとっても苦痛なことだ」と言っていましたし、「多くの症例を見てきて、この状態だと最後は苦しんで死ぬことが多いから、それよりは安らかに最期を迎えてほしい」と言っている先生もいました。確かに苦しんで生きるより安らかに死ぬことを選ぶ気持ちもわかりますが、日本人の感覚とは少し違うようです。また、家族のいない患者さんの場合、2人の医師の署名でCAT 3にすることができると聞き、それはさすがにやりすぎではないかと思いました。ちなみに、日本でも問題になる積極的安楽死に関してはまだ数州でしか認められておらず、こちらはKCLの静注など、明らかに患者を死亡させる目的で何らかの医療行為を行うことを指すようです。
日本でも今後CAT 3という選択肢に関して議論になると思いますし、今現在そのようなことができないからと言って、考えることを放棄せず、考え続けていくことが大切だと感じました。

2.      専門化された医療現場
アメリカではICUに限らず、多くの職業が専門化されています。医師は診断と治療に特化し、心電図・末梢ライン・その他看護的処置などを行うことができません。資格的にはできますが、やり方を知らないようです。また挿管もER以外だとフェロークラスにならないとできないようです。その分自分の専門分野に関しては知識も手技も日本の研修医/医師よりも詳しく知っていることが多く、特に研修医にその傾向を感じました。研修医は研修医になる段階である程度自分の専門を決めているので、その専門と関連のある診療科しか回りません。その分ローテートしている診療科では一人の医師として自立した診療を行っています。つまり、自分で患者の問診等を行い、アセスメントとプランも基本的に自分ひとりで考えます。それを回診の時などにアテンディングに報告し、さらに追加で行うことやちょっとした変更がなされます。そのため研修医と言えど責任が重大で、日本の後期レジデントのような働きをしています。学生でさえもある程度自分の専門は決めているので、その豊富な知識に驚かされました。
一方で細分化されるデメリットもあり、コミュニケーションがうまくいかないとチームとしてうまく回っていかないようです。私が聞いた話では、respiratory therapistと医師の仲が悪くて患者さんの呼吸器の設定に関して揉めたり、ナースと医師の仲の悪さから些細なことが大きな問題になることがあるようです。日本でも細分化が随分と進んでいると聞きますが、アメリカではより進んでいるため、アメリカの現状を参考にしながらチーム医療の在り方を考える必要がありそうです。

3.      疾患の違いについて
こちらのICUでよく見た疾患のNo.1は敗血症です。日本ではよくDICを見たように思いますが、こちらでは逆にDICが少なく、敗血症がとても多いです。日々の検査に凝固系の検査が含まれていないことが一因だと思います。敗血症に関しては診断基準がはっきりとしていて、意外と簡単にその診断基準を満たしてしまいます。ERICUの医師はその診断基準が書かれたカードを常に携帯していて、目の前の患者さんがその基準を満たすかどうかを常にチェックしているようです。このように多くの症例をすくい上げようとしているので症例が増えているという点がある一方で、他の要因としては、アメリカの患者さんは重症化してからERに来ることが多いということも挙げられます。やはり経済的な問題もあり、なかなか軽症では病院に来たがらないようです。オバマケアによるメディケア・メディケイドも日本の保険制度のように自由に無制限に使えるものではないようですし、ちょっとしたことでERに行って高いお金を払って何時間も待ってまで医療を受けることはしたくないのだと思います。

4.      行われている医療について

日本にいるときはアメリカの方がEBMがしっかりしているという印象でしたが、そこまで日米の違いはないように思いました。というより日本もアメリカに負けないくらいEBMを行っています。また、アテンディングが1週間で変わるため、アテンディングごとの方針の違いにレジデントが戸惑う場面もあったと思います。ただどのアテンディングでも、日本のように高い薬でエビデンスが乏しくてもとりあえず使ってみるというようなことはなかったと思います。そのほかにもCTや手術など、侵襲的で危険を伴うような処置に対するハードルが高く、そのような状態だとCAT 3 も視野に入れているためかあまり積極的に治療しに行かないように感じました。もちろん救える人に対しては全力で治療しますが、救えなさそうだと判断されるとCAT 1でもその判断は消極的になりがちだと思います。

ICUという場所ゆえに、この1か月で多くの患者さんが亡くなるところを見てきました。患者さんが回復してきている場面ではあまり日米の違いを感じませんでしたが、患者さんの状態が重篤な際の医療に関しては日本人とアメリカ人の死生観の違いを大いに感じました。

2017年5月21日日曜日

ラスベガスER

こんにちは!ネバダ大学で実習中のkamaです。
遅くなってしまいましたが、4月に実習したEmergency Departmentについて報告したいと思います。


以下の5つの場所で、日勤6am-6pmまたは夜勤6pm-6am・準夜勤2pm-10pm(水曜のみ)が組み合わさってシフトが組まれていました。

①East:Medical ERと精神科
②West:Medical ERと産婦人科
③Peds(小児ER)
④Trauma(外傷ER)
⑤Conference(毎週水曜8am-1pm)

実習内容は、ERなので、”患者さんを診る→診断や必要な検査・治療を考える”、これの繰り返しです。
軽症の方の場合は、先に一人で診察し、先生に報告をさせてもらうこともありました。
一か月目だったこともあり、患者さんの英語が聞き取れず、全然内容の足りないプレゼンしかできなくて、悔しい思いをすることも何度もありました…。が、多岐にわたる主訴の患者さんや重症の方を見て、繰り返し考えることで、少しは鍛えられたのかなと思います。


また、⑤のConferenceは、普段はレジデントの先生方の勉強会なのですが、一度特別講義があり、軍のメディカルトレーニングセンターで行われました。

事前に"military like training"をするから汚れても良い服装で来るように、と言われており、結構不安でいっぱいでしたが、
実際怖かったです。

講義の流れとしては、
止血用ベルトの使い方や銃撃事件の初期対応についての座学
  ↓
負傷した(自分より重い)人を一人または二人でどのように搬送するかの練習
  ↓
実践で、少人数のグループごとに銃撃事件があった現場に居合わせたらどのように行動・応急処置をするかについてのシナリオ×2

でした。

銃撃事件のシナリオは、音も負傷者も本番さながらでした。実習二日目で説明もよく聞き取れなかった私は、撃たれたらどうしようという的外れな恐怖をずっと抱いていました…。
しかし、「もちろん起こらない方が良いけれど、アメリカでは実際に銃撃事件が多く起きているのだからこの練習は私たちに必要」と仰っていた先生の言葉や、冷静にやるべき応急処置をされている先生方の姿は、とても印象的でした。


さて、他の病院に行った皆も書いていますが、日本のERと違うと感じたことを挙げてみたいと思います。(私は日本でもアメリカでも一つの病院でしか実習したことがないので、病院ごとの違いに過ぎないものも含まれているかもしれません)

・病院の混み具合
UMCのERは、40床以上(その他に外傷・小児)と非常に規模が大きく、患者さんはラスベガスだけでなくネバダ州の広い範囲から運ばれてくるので、廊下に担架の列ができるほど混み合っていました。
病院の密度が日本とアメリカでは違うという他に、アメリカではGeneral Practitioner(GP、かかりつけ医のようなもの)からの紹介状がなく大病院にかかれるのがERだけなので、保険がなくてGPがいない人もERに集中してしまうのでしょうか。

・分業体制
アメリカのERにはドクターやナースだけでなく、Physician Assistantという医師と似たような仕事をする方や、救命救急士、クラーク、呼吸療法士、放射線技師、心電図を取る技師、ボランティア(medical schoolやresidency programに応募するには病院でのボランティアの経験が大事なようです)、警察官など色々な職種の方がいて、分業が進んでいました。

・患者さんの疾患
これは違いがあるのは当たり前と言えば当たり前ですが…
gun shotや麻薬中毒、sickle cell anemiaや嚢胞性線維症など、日本ではほとんど見ることがないけれどアメリカでは結構見た疾患がありました。アルコールやコカインに関連した問題というのも多く見ました。

・ディクテーションしてくれる機械
先生方がカルテに入力する際、Siriのようにマイクに向かって喋るとそれを入力してくれる機械がありました。固有名詞以外はほぼ間違えない、驚くべき正確性でした(笑) アメリカでは訴訟が多いので詳細なカルテ記載が必要というのと関係しているようです。



最後に、ラスベガス市内の観光スポットの写真を載せて終わります!郊外については、きっともう一人のyokoが書いてくれると期待します!

中心部は、カジノ・ショッピング・ショー・ビュッフェがそれぞれのホテルにあり、飽きることがありません。
(私たちはそんなに遊んでいませんよ!笑)

シルクドソレイユも行ってきました!
メジャーリーグのチームはないので、マイナーリーグです。

 
 
 
 
 

Radiation Oncology & Ether Dome

こんにちは、Massachusetts General Hospital/Radiation Oncologyで実習中のMariです。今回は実習について少しと、有名なEther Domeについてご紹介しようと思います。


Radiation Oncologyは直訳すると放射線腫瘍学ですが、日本で言う放射線治療をやっている診療科になります。

ここのすごいところは、各臓器の腫瘍に対して放射線治療の専門家がいること。

頭頚部、胸部、乳腺、消化器、泌尿器、肉腫、小児科・・・と外来もすべて別です。

私は2日間ずつで各臓器の外来と治療を見学しています。

そしてもう一つMGHの目玉は、Proton、つまり陽子線治療ができるところです。

放射線治療の詳しい話はここには書ききれないくらいになるのでざっくり話すと、X線などは体を通り抜けていくのに対して(だから画像診断に使えるんですよね)、陽子線はある深さで止まる、つまり腫瘍の場所を指定すればその先の正常組織に放射線を照射せずにすみます。

そのため特に小児や頭頚部など、正常組織への照射を極力減らしたいときに大活躍するのがProtonなのです。

Protonでの治療は高い上に現在MGHにも1台しかないので(もう1台建設中)、この治療が必要だと思った場合はカンファレンスできちんと症例発表をしてコンセンサスを得る必要があります。

実は日本は陽子線治療が全国でも10か所以上、そして重粒子線治療というさらにパワーアップしたやつも全国で5か所、実施可能な施設があるそうです。
先日お話した先生が「世界で10か所もない重粒子線治療の施設の半分が日本にある、なのにアメリカには一つもない」とおっしゃっていました。意外!

少し上の話で興味を持った方がいたら、こちらのホームページが参考になると思います


さて、Ether Domeのお話。

病院の敷地内ですが一般公開されています。

1846年、William Thomas Green Mortonというボストンの歯科医が世界で初めて全身麻酔を用いた外科手術に成功した場所です。

部屋の裏側には展示室があります。当時の衝撃がよくわかる。

"遠国からやってきた医学生も、そして時代が変わった後の医学生も、この場所を訪ね、多大な興味を持って見ることになるだろう
なぜならこの場所こそが、最も輝かしい科学の真実の一つが世界で初めて実演された場所なのだから”

150年以上たってアジアの島国からはるばるやってきましたよ!


エーテルドームがある建物を出てすぐ。敷地内に素敵な公園があります。

病院内はカフェテリアもいくつかあり、ソファが置いてあって休めるスペースもたくさんあります。ラグジュアリー!

5月の実習、残り1週間!

2017年5月20日土曜日

どうぶつのくに ~No worriesの精神~

こんにちは、オーストラリアの首都Canberraで5-6月の間、臨床実習をしています、とんくらです。

オーストラリアと言えばカンガルーやコアラといった野生の動物が多く生息しているというイメージが強いと思います。実際、SydneyやCanberraで生活している中で、様々な生物を見かけます。というわけで、今回はオーストラリアで出会った動物たちについて紹介しようと思います。ここで紹介する写真はすべてこちらで撮ったもので、いかに日常の生活圏で動物と出会えるかが伝わるかと思います。



① Kangaroo(カンガルー)

オーストラリアと言えば、カンガルー。オーストラリアの国章にも描かれるほど馴染み深く、愛されている動物です(ちなみにオーストラリアの国章にはカンガルーとエミューが向かい合って描かれていますが、これにはどちらも前にしか進めない生物=前進あるのみ、という意味が込められているそうです)。

オーストラリアの国章。中心にはオーストラリアを構成する6つの州のシンボルが描かれています。ちなみにCanberraのあるACT(Australian Capital Territory)はこの6つには含まれず、首都特別区として扱われます。
(参照:http://www.peo.gov.au/learning/fact-sheets/national-symbols.html)

日中は森林の中に姿を潜めていることが多いですが、朝方や夕方になると山沿いの芝生に草を食べに出てきます。特に夜は活発に行動するため、夜中ドライブをしていると山の近くの道路脇から突然飛び出してくることもあります。それゆえ、ドライバーがカンガルーを轢いてしまう事故も少なくなく、カンガルー注意の標識すらあります。こちらで高速道路を運転していた時に、道路脇で残念な姿のカンガルーやウォンバットを何度か見かけました (T_T)

Sydneyで出会ったEastern Gray Kangaroo(オオカンガルー)。そこまで警戒心が強いわけではなく、案外近付いても逃げません。場所によっては触っても全く動じずに草を食べ続けるカンガルーもいます。

こちらはCanberraのTidbindilla自然保護区で出会ったおっさんカンガルー。


② Wallaby(ワラビー)

ワラビーはカンガルー科の動物ですが、いわゆる"カンガルー"に比べて少し小さく、すばしっこいイメージです。カンガルーよりも警戒心が強いので近づこうとするとすぐに逃げてしまいます。

Swamp Wallaby(オグロワラビー)です。キノコをもしゃもしゃと食べていました。


③ Birds

オーストラリアには野鳥がたくさんいます。緑の多い所なら必ずと言っていいほど鳥を見かけます。特に、日本ではペットでしか見ないようなカラフルなオウムの仲間が平然とその辺を飛んでいたりするので、着いたばかりの頃は驚きました。ここでは実際に見かけた何種類かの鳥たちを紹介します。
  • Australian Magpie(カササギフエガラス)

Canberraでよく見かけるカラスの一種です。日本のカラスに比べると少し小さく素早く動く気がします。黒だけでなく首筋や体の一部に白い羽毛が生えているのも特徴的です。普段はパイプオルガンのような不思議な鳴き声をするのですが、モノマネも上手で他の鳥の鳴き声などを真似して鳴くこともあるそうです。

  • Galah(モモイロインコ)

グレーの尾羽根に、頭部から腹部にかけての綺麗なピンク色が特徴的なオウムの仲間。写真のように芝生で地面を掘って餌を探している姿をよく見かけます。よちよちとした歩き方や見た目は可愛いですが、作物を食べる害鳥として農家からは嫌われています。ちなみに日本でペットとして買うと1匹30万円くらいするそうです。一見珍しそうな鳥に見えますが…


こんなにいっぱいいます。上の写真だけでも1000万円分はいそうですね。そう思って近付いたら全部逃げていきました。1000万円が一斉に羽ばたいていく様は、この上なく趣深い情景でした。

  • Sulphur Crested Cockatoo(キバタン)

真っ白な身体に後頭部の黄色い湾曲した鶏冠が特徴です。これも一見珍しそうなオウムの仲間ですが、結構見かけます。美麗な見た目をしてますが、上の写真のように芝生に生えている草を根こそぎ掴み取って餌を探すので、こちらも地元の人には庭荒らしとして嫌われているのだとか。羽を広げて飛ぶ姿はダイナミックで美しいのですが、鳴くとギャーギャーうるさいです。黙ってれば美人なのにってやつですね。

  • Cremson Rosella(アカクサインコ)

National Botanical Gardenで撮影したこの鳥は、オーストラリア南東に生息するとても綺麗なインコです。鮮やかな赤と青の羽毛が目を引きます。幻の鳥感がありますが、こいつもいっぱいいます。

  • Laughing Kookaburra(ワライカワセミ)

こちらもNational Botanical Gardenでたまたま見つけました。名前の通り、カッカッカッと笑い声のような鳴き声で鳴くのでこっちまで釣られて笑いそうになります(↓参照動画:https://www.youtube.com/watch?v=S0ZbykXlg6Q)。



  • Rainbow Lorikeet(ゴシキセイガイインコ)

Sydneyのカフェの屋根に止まっていたのをたまたま撮影できました。名前の通りRainbowな見た目をしていて、こんなルックスのインコが普通に生活圏を飛んでいることに驚きます。和名ゴシキじゃなくてナナイロとかにすればよかったのに。

  • Red-rumped Parrot(ビセイインコ)

オーストラリア南東にしか生息していない固有種だそうです。写真のように、鮮やかな緑色に加えて尾の辺りに赤い羽毛が生えている(= Red-rumped)のがオスで、メスは全身オリーブ色。名前の通りとても綺麗な声で鳴くようですが、まだ聞いたことはないです。

  • Australian White Ibis(オーストラリアクロトキ)
頭と尾が黒く、身体は白い羽毛に覆われた大きなトキの仲間です。今の時期、Canberraでは見かけませんが、Sydneyで嫌というほど見かけました。日本では絶滅してしまったトキですが、オーストラリアには沢山いるんですね。


動画はSydneyのHyde parkでサンドイッチを食べていた時におこぼれを貰いに来た生意気なIbisです。こんな感じで街中にたくさんいます。ちょっと考えしにくいかもしれませんが、日本で言うカラスとかハトのような存在みたいです。


④ コアラ

カンガルーと並んでオーストラリアを代表する動物となっているこの動物は、コアラ科コアラ属の唯一の種です。つまり、コアラという種類しかいません。しかし、一口にコアラと言っても、実はオーストラリアの中でも、南北で見た目がかなり違うようです。北部に生息するコアラは比較的小さく、南部に行くにつれ大きくなって毛がもっさりしてあまり可愛くなくなっていきます(ベルクマンの法則ってやつですかね)。御存知の通り、ユーカリの葉を主食としていて、一日のうち22時間くらい寝ています。写真はTidbindilla自然保護区で見た野生のコアラです。

睡眠コアラ

覚醒コアラ

動くコアラ


⑤ ???

朝起きるのが早く、寒さに強い生き物





以上、オーストラリアで出会った野生動物を色々と紹介しましたが、実際にはまだまだ多くの生物が暮らしています。そして、オーストラリアで生活・観光していると、この国の人々が如何に自然や動物を大切にし、共生しようと努めているか、その文化を強く感じることができます。

畏怖すら覚えるような大自然に佇み、芝生を延々と貪り続けるカンガルーと戯れ、南天の星海の下でふと自分の存在を一生物として俯瞰してみると、日頃抱えていた多少の悩みなどどこかに消えてしまい、不思議と穏やかな気持ちに包まれます。

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病棟で実習していたある日、高血圧性脳症が疑われていたある患者さんに対して、上級医と共に眼底鏡を用いた診察をしていた際、患者さんに「私はここがANUの関連病院なのだと分かって入院しているし、私は医学生の勉強材料となる義務がある。好きなだけ診察して勉強してね、No worries」と言って頂いたことがありました。とても寛大な方でした。

"No worries"

この国の人々がよく使う言葉です。「気にすんな、大丈夫、なんとかなる」。オーストラリアという国が、多くの移民を受け入れ、多様な文化が融合し、自然を重んじ互いを尊重して助け合ってきた過去を持つ国であること。そしてそこで暮らす人々、特にCanberraの人々が皆とても人情深く、自然の中でのんびりと生き、穏やかな気質を持っていること。その文化性全てが、この言葉に顕れている気がしてなりません。

そしてCanberraで実習をしていて、改めて感じるのは「人」の価値の重要性です。

医療技術が発達することで患者に与えられる医療レベルの質は確かに上がります。しかし、本質を見失い、リテラシーを損なった場合、医師は発達した技術に信頼を置きすぎ、患者はより高い技術ばかりを求め、相対的に「人(=医師)」への信頼は低下してしまいます。

もちろん、エビデンスや技術はとても大切ですし、医療の質を向上させるために進歩させていく必要がありますが、やはり最後に、そして最も重要なファクターとして、自分の頭で考え、互いに共感し、安心感を与えられる「人」を、当然忘れることはできません。例えAIの診断力が人間を凌駕したとしても、その"人間らしさ"は損なわれてはいけない医療の側面だと感じますし、それこそがValue Based Healthcareの成立に最も重要な観点だと考えます。

前回の記事で、電子カルテがないことを嘆きましたが、逆に極端な話をしてしまえば、電子カルテがないからこそ生まれる医療者同士の会話もあるわけです。効率性というメリットを考えれば間違いなく導入されるべきとは思いますが、その良し悪しは別として、そこには"人間らしさ"がある、と見ることもできるのです。マスクが使われていないことにも、そうした意味合いを見出すことができるかもしれません。これも、それがエビデンスの観点から良いか悪いかは別問題です。最終的には、合理性と人間性を天秤にかけて、丁度いいところを探っていく必要があり、これが最も難しい部分なのかもしれません。

もちろん、決して日本の医療に人間らしさがないと言っているわけではありません。むしろ、日本は客観的に高いレベルで患者中心のValue-Based Healthcareが行われている、と評価されている国の1つでもあります(参照: http://vbhcglobalassessment.eiu.com/)し、少なくとも医科歯科附属病院では患者さんが人間らしく生きるための、患者中心の医療が行われている、と昨年の病院実習で感じました。

それでも、日本の現状として、モノや技術、情報、サービスの価値が上がりすぎて、「人」への価値が相対的に下がっているのではないか、と個人的に思ってしまいます。世界の中で相対的に観て自殺率が高いのも、労働環境が悪いのも、「人」以外のものの価値を追い求め過ぎる結果、人間らしさが忘れられ、権利が忘れられ、「人」としての価値が擦り減らされている部分があるからではないか、と思ってしまうのです。もちろん、個人的な意見ですし、言うは易し行うは難しな問題なのですが、漠然とそう感じます。少なくとも心構えとして、まず人間としてハッピーに生きるために、"人間らしさ"を忘れちゃいけないな、と。この国での生活は、そんなことを改めて思い出させてくれる気がします。

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まとまりのない文章を色々書いておいてアレですが、その国にはその国の歴史や文化の形があり、どれが正解ということはないと思います。なにはともあれ、一つの形として、ここで学んだ"No worries"の精神を忘れずに生きたいな、と思った次第でした。

全然関係のない話を長々としてしまってすみません。早いもので1クール目の実習のうち3週間が過ぎてしまいましたが、Neurologyの残り1週間、そして次のクールのAnaesthesia:麻酔科も気合を入れて頑張っていきたいと思います。

では(^o^)丿

2017年5月10日水曜日

ANU臨床実習 ~Neurology編~

こんにちは、5-6月にオーストラリアは首都Canberraの、Australian National University(以下、ANU)のCanberra Hospitalで臨床実習をしています、とんくらです。

オーストラリアに到着してから2週間近くが経過し、こちらの生活にも随分慣れてきました。実習も2週目に入り、ANUの実習スタイルが分かり始めたところで、こちらでの実習生活について少し記事を書いてみようと思います。



私が5月に実習しているのはNeurology(神経内科)です。入院患者の多くはやはり脳梗塞の患者ですが、MS(多発性硬化症)やADEM(急性散在性脳脊髄炎)などの患者も入院しています。実習スタイルは科によって異なるのですが、Neurologyでは基本的にはStudent Observerとして立ち振舞うこととなっています(お客さんのような感じ?)。Dutyとしては、

  • Paper Round:毎朝最初に行う、患者の引き継ぎや入院患者についての簡単なカンファ。
  • Ward round:Paper Roundの後行われる回診に付いてまわる。
  • 各種Meeting:多職種間、放射線、脳外科合同など様々なカンファに出席する。
  • Journal Club:抄読会。先週行われたJournal Clubでは、つい1ヶ月程前にNEJMのトップを飾り話題となった、"Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica"が取り上げられました。プラセボってほんと凄いですね。
  • Bedside Teaching:上級医のもとで、問診の流れや神経学的所見の取り方、異常所見などについて実際に入院されている患者さんに承諾を得て実践的に学ぶ。
  • Lecture:上級医による講義、水曜日には医学部生の共通講義もあります。

などに出席することとなっています。その他の時間は基本的にはフリーで、何をしてもOKです。研修医(こちらでは1年目はIntern、2年目はResidency、専門科研修中の先生はRegistrarと呼ばれます)の先生の仕事に興味があればお願いして付いていくもよし、検査を見たければ付いていくもよし、コンサル(他科からの相談)の先生に付くもよし、外来見学するもよし。

お客さんということで、どのチームについても良いですし、何もイベントがなさそうならちょっと気分転換に中心街に出かけるのもありです。とにかく自由な印象で、先生方はどんな質問でも受け付けてくれます。とは言え、何も言わなければ放置状態なので、積極的に色々なイベントに随伴させてもらっています。

金曜日にはNeuroradiology meetingといって、神経内科医、脳外科医、放射線科医が集まって画像をもとに症例検討します。ちょっとレベル高すぎてついていけないことが多いですが、隣の先生に聞いたりして何とか喰らいついております汗

また、ANUの学生はカリキュラムの一環としてLong Case(既に過去の記事で説明されているアレです)を何例か経験しなければならないので、私も時々それに随伴しています。現在NeurologyにはANUの学生が4人も周っているので、Long Caseの患者さんを探すのも大変そうです。

ただし、今週はThe Australian & New Zealand Association of Neurologists(ANZAN)というオセアニアの神経内科学会 @Gold Coast が、5/9-12の日程で開かれるということで、上級医の先生がほぼいません!そういうわけで、今週は上で書いたDutyがほとんどなく、少し暇してます笑

水曜日のお昼はGround Roundという病院全体のイベントが開催され、様々な科から毎週2人のプレゼンターによる症例報告や講義が30分ずつで行われます。開始前にはサンドイッチやミートパイがふるまわれるので、毎週通ってます笑 今回はObesity Hypoventilation Syndrome(OHS, 肥満肺胞低換気症候群)の症例報告と、Hemophilia(血友病)治療の歴史に関する講義でした。美味しいし面白いので毎週楽しみです。



さて、既にTTやAmyが過去の記事でも触れていますが、実際に実習に参加してみて私が感じた中で、日本(医科歯科附属病院)との違いを挙げるとすれば、

● 紙カルテ!
電子カルテが導入されていないため、入院患者の情報はフォルダにまとめられ、紙カルテとして各病棟に置かれています。情報漏洩の心配は少ないとはいえ、やはり医科歯科での実習に慣れている身としてはとても非効率に思えてしまいます(*_*; 一応、外来と病棟にPCはあり、検査記録や画像参照などは可能なのですが、数が限られているので十分に機能しているとは言えません。そして先生方の字が達筆過ぎて読めない…。クセが凄いんじゃ…。

● 白衣なし、マスクなし
医師は皆、白衣は着ずに、セミフォーマルな格好で仕事をしています。おしゃれなワンピースを着ている女医さんもいました。個人的には、なんとなくかっこいいのでこのスタイル凄く気に入ってます笑 ただマスクをしないのは感染防御の観点からどうなんだろうと思ってしまいます。お互いの表情をしっかりと見られるという意味では良いのかもしれません。

● ポケベル
医師同士の連絡はPHSではなく、ポケベルを使っており、かかってきた番号に医局の固定電話からかけ直す(なんか面倒な上に、このポケベルの着信音がやたらうるさい!もう少し音量設定下げればいいのに…)という仕組みになっています。先生によっては携帯電話で連絡したりもしています。

その他、神経診察がちょっと違ったり、スタッフステーションで軽飲食してたりと、やっぱり色々と文化が違うんだなあと思う毎日です。それでも(当然といえば当然ですが)、行われている医療そのものにそこまで大きな違いは感じられません。例えば、昨年私が神経内科をローテートした際に議論になっていたワーファリンとNOACの選択について、似たような検討がここでも繰り広げられていました。Meetingで議論される診断や治療方針には常に最新のエビデンスが適用され、患者に何が起きているのか病態生理を考えながら、最終的には患者・患者家族の方針に沿った医療を行う、という原則は主要国で共通なのだと感じます。

でも電カルの有無は本当に大きい…笑



ところで、既にこのブログでも紹介しているように、医科歯科大では現在、Harvard大学やNevada大学、国立台湾大学など、海外臨床実習先として様々な選択肢が用意されています。その中でも英語圏かつ自分の興味のある科を高い確率で選択実習できるのが、ANUの良い点ではないかと感じていますし、それが実際に私がANUを選択した理由の1つでした。

というのも、個人的に神経科学・神経医学に興味があり、海外での臨床がどのようなものか、是非見聞したいと思っていました。加えて、様々な土地を旅してその文化と歴史を体感することが好きなので、自分にとっては大変貴重な機会となっています。

もし医科歯科の海外臨床実習プログラムに興味のある下級生がこの記事を見ているのであれば、そうした観点からANUでの実習の良さを感じ取って貰えれば、と思います。また、ANUに限らず、このブログを通して各実習先で学べること・経験できること、ひいては海外臨床実習の面白さを味わってもらえれば幸いです。

真面目な話が多くなってしまいましたが、次回はオーストラリアでの生活や旅行記などについて記事を書いてみようかなと思います。

こちらに来る前にSydneyを旅行しました。Sydneyは様々な文化がごっちゃ混ぜの、オーストラリアらしい楽しい街でした。写真はMrs. Macquaries Pointからの夕景。少しアクセスは悪いですが、Opera HouseとHarbour Bridgeを一緒に眺められるオススメポイントです。

それでは~(^o^)丿

2017年5月9日火曜日

HMS Exchange Clerkship program ―申し込み編―

どうも、Mass GeneralのRadiation Oncologyにて実習中のMariです。先月はBoston Children'sの小児外科にいました。

さて今回はどうやって私たちがボストンでの実習にこぎつけたかのお話をしたいと思います。文字ばっかりですが、一番実用的なことが載ってるはず。

※※以下の内容は私が申し込んだ2016年末~2017年春にかけての情報です。実際に申し込む際には必ず公式サイトを確認してください。※※2017年6月・一部訂正しました

プログラムの仕組みについて説明すると、
HMSの学生は関連病院を回りながらローテーションを行うわけですが、必ずしも全ての診療科に常にいっぱいの学生がいるわけではありません。
そのため、おそらく「空きのある」診療科に外部の学生を受け入れています。(Mariの勝手な予想ですが。)そして授業料を徴収するわけです。

今期に関しては月4800ドルという授業料(国立大学1年分やん!)です。

アメリカは大学の学費が高いことで有名ですが、本当に高いんや・・・



では本題に戻ります。どうやって準備をすればいいのか?

申し込みには①online application、②電話面接、③書類提出(郵便)があります。

これらの準備、いつから始めるべきか?
半年前からです。
一応「準備」には「下調べ」も含めてますよ。

今年の場合、申込は半年前から受付が始まりました。また、申し込む実習の期間の一番最初が4月の場合は12月末までにonline applicationを済ませ、1月末までに書類が先方に届く必要がありました。

実はこの提出書類、申し込んでから受け取るまでに時間がかかるものもたくさん。詳しくは③で。

まずは①online applicationについて。


公式サイト参照。以上!


冗談です。


申し込みの流れ自体は指示に従えば問題ないでしょう。

このステップの一番の強敵はこれ!

コース選び!(HMS course catalogに飛びます)

大量にある実習プログラムのシラバスがオンラインで全て見れます。
この中から自分が実習したいプログラムを15個まで選ぶことが出来ます。
ただしこれ、全てが外部生も応募可能ではないんです。

HMS only
US/Canadian
Accept international students

という感じ。一番上は内部生だけ!そして日本国内の医学部に通っている場合は上2つの選択肢は選べません。

このプログラムの山をまず応募の可・不可でわけていくので一苦労です。
同期がいる場合はここで人海戦術を使いましょう。
(今年は手分けしてExcelに全ての情報を集約しました)
あとは自分が好きなコースを選ぶ。内容をしっかり確認しないと痛い目を見ることもあるので気を付けましょう。

②電話面接

こちらも上の公式サイトにありますが、記載されている番号に電話をかけて簡単な質問に答えていきます。予約いりませんでした。電話をかけてはい、終わり。

私の時は名前とか大学名の他に、「今まで回った診療科は?」「どの科に興味があるの?」とかでした。

以前は「アルツハイマー病について説明して」みたいな質問もあったそうなので、私↑の体験談を聞いて油断しないように。

余談ですが、日本時間の夜中にドキドキしながら電話をかけたMari、「電話面接?あ、ちょっと待ってて!」を最後に無音になりました。

ー無音ー

待つこと5分半

「Thank you for waiting」

超待ったよ!

日本みたいに待ってる間の音楽鳴らないからすごい不安になったよ!!!


③書類提出

これは結構気を使うところ。

大学の成績証明書(英語版)、英語での推薦状など大学の事務に申し込んで出してもらうのに時間がかかるもの。

そして抗体価証明書。病院実習をしている医学生の皆さんは多かれ少なかれ抗体価測定を行いワクチン接種を済ませていると思いますが、HMSの基準はやや厳しめ、あとアメリカなので日本と違う基準だったり違うものが必要だったり。

人によっては実習が忙しくて平日なかなかワクチン・検査にいけない、もしくは近くにトラベルクリニックなどがないこともあると思います。
そういった状況も含めて、必要なものとどこで受けられるかは早めに調べましょう。

必要書類はHMSの公式サイトでも確認できます。また、online applicationを済ませた後にフォーマット一式が送られてきました。

また、一つ難関があります。
application feeの支払い方法が非常に限られています。

今時カードで払えないんだ・・・

アメリカの銀行の口座を開設できるなら一番いいんですが、事務や先生に相談して、どなたか口座を持っている方に小切手を書いてもらうというのが現実的かもしれません。

口座名義と申込者の名前が違う場合は一応、事情を説明するお手紙を付けておくといいと思いますよ。


全て揃ったら郵便に出します。

ここで、書類が手元を離れる前に、全ての提出書類をスキャン・データを保存しておきましょう。

後々絶対必要になるから。

送るときにはトラッキングできる形式(EMSとか)にしておくと安心です。



以上、長い長い準備編でした。

全ての提出を終えたらあとは通知を待つのみ。

今年は実習開始4週間前に一斉にメールで通知が来ました。

通知が来て1週間以内に支払いをしなければいけなかったり、そもそもの渡航準備でばたばたしますが、行くと決まればこっちのもんだぜ!

ということで、次回は宿泊その他の準備について書きたいと思います。

マサチューセッツ総合病院 腎臓内科

初めまして、ハーバード関連病院で実習中のTAです。4月は4週間マサチューセッツ総合病院の腎臓内科で実習したのでその経験をシェアいたします。

アメリカの内科病棟の仕組み
日本では、病床数の多い大学病院や市中病院では専門科ごとに病床を持っていますが、アメリカでは、同様の大規模病院でも、内科は一般内科(General internal medicine)病棟のみで、内科専門科の関与は基本的にコンサルテーションという形で行われることが多いです(もちろん例外もありますが)。

腎臓内科と実習内容
マサチューセッツ総合病院の腎臓内科には、consultICU consult(集中治療室入院患者の腎臓・電解質管理)、transplant(臓器移植後患者を扱う)、dialysis(血液透析)の4チームがあり、私はconsultチームで実習を行いました。各チームはattending(専門医の主治医)、fellow(後期研修医)主に1年目、レジデント(初期研修医)、医学生で成り立っており、私がいたときは、レジデントがいなかったため、attendingfellow、私の3人でチームとなっていました。consultチームのattendingfellow2週間で入れ替わるため、前半と後半で私以外は異なるメンバーでした。
コンサルテーション業務は、マサチューセッツ総合病院の(ICU以外の)一般病棟すべて患者が対象で、一時に1020人の患者をチームで担当していました。私自身は、一週目は電子カルテへのアクセス権が与えられるのに時間がかかり、見学型でした。二週目以降は、日々45人の患者を受け持ち、新しいコンサルテーションのファーストタッチ(最初の挨拶、詳しい問診、診察)、回診、attendingへのプレゼンテーションやカルテ記載などを行っていました。コンサルであってもカルテは毎日記載しますが、記載したカルテは、Fellowが必要に応じて編集し、それに対してattendingが補足を付け加えるという形でした。また、新しいコンサルテーションが入った際や病状の変化があった際は、腎臓内科に備え付けのラボで尿沈渣を自身で実施し、診療の補助としていました。

学生向け講義
クルズスのような学生向けの定期の講義はありませんが、fellowは空き時間にホワイトボードでの講義を30分から1時間ほど数日おきに行ってくれました。内容は急性腎障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)、電解質、輸液についてなどでした。また、fellowattendingともに、プレゼンの度に具体的にどうしたいかや関連事項の質問を聞かれ、(勉強不足で恥ずかしいながらに答えられないことが多いが、)かなり勉強になりました。

一日の流れ

6:00-7:00
担当患者のカルテを見て、前日〜当日朝までのイベント、血液検査値などを確認。
7:00-8:00
Pre-roundfellowとともに担当患者の回診(担当患者に関しては自身で問診や診察)
8:00-9:00
朝のセミナー(ない曜日もある)
9:00-10:00
Team meeting:チーム3人で担当症例のディスカッション、診療方針決定(担当患者に関しては1-2分のプレゼンテーション)
10:00-11:00
Attending round:チーム3人で回診(Attendingによってはなし)
11:00-12:00
カルテ記載
12:00-13:00
昼のセミナー(ない曜日もある、昼食が出る)
13:00-16:00
カルテ記載、フォローアップ、尿沈渣、新しいコンサルテーションのファーストタッチなど
16:00-17:30
新しいコンサルテーションAttendingへのプレゼンテーション(5分程度)、継続患者に関するチームミーティング

一週間のセミナー
教育的なセミナーが非常に多く、以下のものに毎週に参加しました。
月(昼)
MGH Renal Ground RoundsMGH腎臓内科の招聘講義(例:UCSF助教授による高齢者における高血圧管理の講義)
火(朝)
MGH/BWH Combined Renal Ground RoundsFellowship(後期研修医)プログラムはBrigham and Women’s HospitalBWH)と合同であるため、BWHとビデオ通話でのfellowの症例発表や招聘講義
水(昼)
MGH/BWH Fellows ConferenceFellow向けのBWHと合同のセミナー(例:BWHattendingによる血液透析導入判断の講義)
木(朝)
Medical Ground Rounds:内科全体の招聘講義(例:Rockefeller大学教授によるHIVワクチンや抗体医薬の臨床研究の進捗)
金(朝)
Transplant and Dialysis Conference:腎移植や透析に関するセミナー(例:MGHattendingによる腎移植後患者の免疫抑制剤の臨床治験)
金(昼)
Renal Pathology Conference:腎生検が行われた症例に関しての生検標本の供覧を含めた症例発表と検討
不定期
Case Records Conference: New England Journal of MedicineCase Records of MGHのカンファレンス(論文から予想していた以上にカジュアルで、教育的な内容であった)

先週からは、ブリガム アンド ウィメンズ病院・ダナファーバー癌研究所の骨髄移植を回っているので次回はそれについて少しお話しします。